00-09年のSIGGRAPHのCAFの最優秀賞と審査員特別賞まとめ

2000年から2009年までのSIGGRAPHのコンピューター・アニメーション・フェスティバルのBest of Show(最優秀賞)、Jury Award(審査員特別賞)をまとめてみた。リンク先がないのは見つからなかったやつです。

また、ゲームや映画、個人制作のCG映像のコンクールとしての面もある。「世界最大かつ最高のCGの祭典」といわれ、学術的研究、アート、教育など、あらゆるCGに関する最先端が集結する。 Electronic Theater と Animation Theater の2部門に分けて評価され、Electronic Theater では高い評価を受けた作品が上映される。


2009年

【Best of Show】
YouTube - French Roast Trailer web


60年代のパリのカフェを舞台に繰り広げられるドタバタ人情劇。パリジャンの監督が海外で働いている時、パリの風景が懐かしくなって思いついた作品。セリフや説明は一切ナシ、カメラも大きな鏡のあるカフェの一面から動かない。それなのにキャラクターの動きとサウンドだけでストーリーを表現しているのが見どころだ。
【Jury Award】
The Mill's Directorial Collective 'Bif' Win Award For 'Dix' | Sputnik7


The Mill内の若手アニメーター育成プログラムの一環の作品だ。監督はThe Millの社内チームBIF Production、VFXはThe Millが手掛けている。歩行時に10数えないと進めないという強迫観念に駆られた男の心象風景を、2DCGと3DCGを巧みに使い分けて表現している。


2008年

【Best of Show】
YouTube - Oktapodi (2007) - Oscar 2009 Animated Short Film


CGで描かれたタコの恋人同士がユーモラスに逃げまどう様を映像化したもので、アヌシーを始め、数々の映像賞を総ナメにしているフランスの作品。同時に CAF Audience Prize (観客賞)も受賞してい る。独特の雰囲気を持ったキャラクター達のユーモラスな動きが絶妙。フランスのアニメーション学校、Gobelins(ゴブラン映像学校)の学生8人による作品。

【Jury Award】
YouTube - Mauvais Ro^le


マーセルは見るからに恐ろしい出で立ちをしたモンスタークリチャー。彼はゲームの世界では毎度ラスボスの役をさせられている。今日も、ファンタジー世界を舞台にしたRPGのラスボスの仕事をこなすが、手加減と、場の盛り上げ方が今ひとつで、プレイヤーに圧倒的な強さで勝ってしまい、ゲームのシーン監督(プログラム)に今日も叱られてしまう。
 何もかもイヤになったマーセルは他のゲームへの転職を決意する。


2007年

【Best of Show】
YouTube - The ark (full) [720p full HD]


突如出現した謎のウィルスに侵され、地球上のほぼすべての生物が死滅した未来。人類は未来のために生き残った生命を巨大な船に乗せ隔離することを決意する。その船の一室で、自分がそのウィルスに冒されていることを知った男がいた…というSFショート。
 キャラクタは人類に似ているようでどことなく異星人チックな面持ちの印象的なデザインだが、シェーディングはリアル指向で行われている。
 制作はポーランドのインディペンデントチーム。小規模チームで制作されたとは思えないほどの緻密なディテール感は圧倒的。

【Jury Award】
Dreammaker

プロデューサLeszdek Plichta氏の下、Filmakademie Baden-Wu"rttembergのInstitute of Animation, Visual Effects and Digital Post Productionの学生たちが、ほぼ全編をAutodesk 3ds Maxで作り上げました。


2006年

【Best of Show】
YouTube - One Rat Short [Complete]


2006年度Electronic Theaterの最優秀作品賞を獲得した作品。線路脇に住むドブネズミが、ひょんなコトがきっかけで何かの研究室に迷い込んでしまう。そこには何匹もの生体実験用のねずみが飼われていた! そこでドブネズミは美しいハツカネズミと出会い瞬く間に恋に落ちてしまう。ドブネズミとハツカネズミはこの実験室から脱出を試みるが、実験を司るマシーン達が彼らの逃亡に立ち塞がって……。擬人化をまったくせずに、写実的なリアル系ネズミを3Dグラフィックスで完全再現。フルCGアニメながらそれを感じさせないフォトリアリスティックなビジュアルに仕立て上げているのが特徴的。

【Jury Award】
YouTube - 458nm


静物とも機械ともおぼつかないカタツムリ型の生命体、2匹が交尾を行うというサイバーかつエロティックな雰囲気を持った作品。ELECTRONIC THEATER審査員特別賞を受賞した。金属独特の異方性反射の質感と、透き通ったような表面下散乱の質感のコントラストが面白い。


2005年

【Best of Show】
YouTube - Shane Acker's '9' Short Film (2005)


暗く重い生物のいない、ガラクタとぬいぐるみだけが動き回る異世界。ズタ袋に魂が込められて縫い合わされただけの9体の人型ぬいぐるみには"1"から"9"という名前が付けられていた。彼らはこの暗い世界で、ガラクタでできた凶暴なモンスターの脅威におびえながら暮らしている。一見しただけではストップモーション・アニメのような表現だが、そのダイナミックなアクション・シーケンスは紛れもなくCGによるもの。

【Jury Award】
YouTube - Fallen Art


塔のてっぺんで不気味に笑う士官。彼は下級兵にここから飛び降りるように命じる。飛び降りた部下は地面に激突して死亡。別の上官はこの下級兵の死に様を写真に収める。そして塔の上の士官は再び別の下級兵に塔から飛び降りるように命じる……。上官の目的は何か。短い尺の中に謎と驚きを盛り込んだ濃い内容の作品。独特の照明効果とキャラクタの画風もインパクトがある。


2004年

【Best of Show】
YouTube - Birthday Boy


Sejong Park氏は36歳の韓国人で、オーストラリアのFilm Television and Radio Schoolの学生である。この学校は、生徒を年間4人しか採らないという非常に狭き門で、その代わり一度入学してしまえば、国が学費や映画の制作費を全面負担しており、作品の品質は非常に高い。Sejong Park氏は初めてCGに取り組んだとは信じられないほど、この作品の完成度は高い。

【Jury Award】
YouTube - RYAN (Entire Film)


実在し、まだ存命のカナダの天才的アニメーターRYAN LARKIN氏の半生を描いた問題作。カナダの映像界に多大な影響を及ぼしたRYAN LARKIN氏は今は福祉施設に住み、物乞いをする毎日を送っているという。彼の人生は一体どのように転落していったのか…を、心理的な状態を視覚化した、本作のクリエイターChris Landreth氏の独自表現「サイコロジカル・リアリズム」手法にて描いていく。


2003年

【Best of Show】
YouTube - Eternal Gaze Part-1

この作品は,20世紀の偉大な芸術家の一人であるAlberto Giacomettiの生涯最 後の9年間における作品制作にかける思いや苦しみなど表した感動的な作品で ある. 主人公であるAlbert Gaicomettiの深い思いがCGキャラクタでうまく表現さ れており,CGで制作されたことを忘れさせてくれる作品であるとの評価を得て いる.

【Jury Award】
Tim Tom

この作品では,TimとTomという二人の主人公が会おうとするのであるが,作者 がなかなか会わせれくれないというストリーになっている. ストリーの面白さももちろんであるが,映像制作の伝統的な技法がふんだんに 取り込まれており,また,メモ用紙に書かれた限られた表情しか持たない主人 公達であるが,豊かな表現がなされているところが評価されたそうである.


2002年

【Best of Show】
YouTube - The Cathedral - Animation (Tomek Baginski)


 The Cathedralは,ジャレック・デュカイ氏のSFファンタジー小説をベースにしたもので,"カテドラル"(大聖堂)はただのビルではないし,そこへ救済を求めてくるのも人間だけではないというテーマで,セリフはないが生命の転生や自然の偉大さを伝えている(ようだ)。このアニメーションは,「3Ds MAX」で制作したものを「Photoshop」や「After Effect」で加工して,「SoftImage DS」で編集して作られている。
 これをバジンスキー氏たった一人で,14か月をかけて制作したとのことだが,樹木へと同化した人の表情やテクスチャ,オーガニックな色彩の使い方がなんとも見事。


2001年

【Best of Show】
YouTube - Values (2001)


バン・ファン(南カリフォルニア大学映画学科)
「『 Values 』は私と亡くなった父との関係からインスピレーションを得て作った作品です。保守的で、社会という団体の中で価値観を求める親と個人としての価値観を見出していく子供、そういった人生に求める価値観の食い違いなどをテーマに物語を作りたかったのです。」


【Jury Award】
YouTube - f8 (Excerpt) - AnimationTrip.com


SF映画の古典的な技法を用い、2年以上の月日を費やして製作された傑作。この作品に見られる驚くほどに美しい背景、照明、心奪われるキャラクター・デザイン、見事なカメラワークは、個人による映画製作の未来に広がる可能性を示唆している。


2000年

【Best of Show】
YouTube - 鬼武者


CGによる映像制作の場合、絵コンテを作成し、それ以外の無駄な部分は極力制作しないのが一般的です。ところがこのシーンでは監督と役者、スタッフが殺陣のアイデアを現場で出し合い、さまざまなアクションをその場で組み立ててゆく方法で行われました。役者ひとりひとりに性格設定がされ、短くもストーリーのあるアクションシーケンスとして、数十パターンものシーケンスが収録されました。